2つのアイアンブーツ

【 プレーントゥの “N40” 】

【 パンチトキャップトゥの “POLICEMAN” 】

比べてみる。

もちろん革が違う。
POLICEMANはクロムエクセル
N40はワックスドブルハイド
どちらも色は黒で、どちらも油分が非常に多いが、見た目は驚くほど違う。
クロムエクセルは鈍い光沢のスムースレザーでワックスブルハイドはブルームが噴き出た天然シボ革

真っ黒なクロムエクセルに比べて、ブルームのおかげで濃いグレーに見えるブルハイド

デザインはもちろん違うけれど、大きく違うのはウエストからトゥにかけてのライン
どちらもインサイドストレート、アウトサイドカーブなのだが、

POLICEMANの方がトゥのアールが大きく、ボテッとした印象。

トゥの高さもPOLICEMANの方が高い。
よって、指の収まる空間が確保される。

ソール側から見てもトゥの形状の違いがよくわかる。
また、親指の付け根あたりからウエストへのラインも、POLICEMANの方がきつく、ウエストが若干細くなる。
よく見たら、ヒールもPOLICEMANの方が小さい。

この画像からもPOLICEMANの方が土踏まずの絞り込みが強いのがわかる。
全体的なフィット感も全然違っていて、割とルーミー(といってもぶかぶかではない、快適)なN40に対して、ピッタリめなPOLICEMANという感じ。
POLICEMANは甲高の人に向いているという説明だが、N40の方が甲高に感じる。

履き心地に関しても全然違うのだ。
足全体を優しく包み込むフィット感のN40.
つま先は自由に、それ以外はピッタリ合わせてくるPOLICEMAN。

木型が明らかに違うことと、革の質も履き心地に影響しているのかもしれない。
履き口の処理も異なる。

切りっぱなしのN40

パイピング処理のPOLICEMAN
デザイン上の大きな違いだが、履いた時はパンツに隠れて見えない。
そして実はもっと見えない部分、ライニングからしか見えない部分の処理も違う。

POLICEMANは縫合部分をつまんで縫って縫い代を割っていて、ライニングにそのアタリがでている。
N40は革の断面を合わせて縫っている(手縫い?)。
どっちがいいか悪いかとかわからないし、アッパーも一緒に縫っているかどうかもわからない(素人ですから)。


アイアンブーツは、この2つの他に “5515” “FLT” “Devil Dog” “T-Monkey” “Hephaestus(短靴)”などのモデルがあるが、おそらく皆木型が違うのではないか?
1つの木型から複数のモデルを作るメーカーは多いが(モデル数が多いから仕方がないのかもしれないが)、モデルごとに木型を変えているのはすごいことではないかと思う。
生産量の少ない零細なメーカーなら、少ないモデルを1つの木型で作り上げるほうが効率がいいはずだ。
木型の開発は非常に手間と時間がかかると聞いているから。
アメリカのFOOT-SO-PORTがダメになったのは、工場火災で木型を焼失したからだという話を聞いたことがある。
真偽はわからないが、木型とは靴づくりには非常に重要なものなのだ。

効率よりも理想とする靴を作るという情熱がないとできないことではないかと思う。

結果、素晴らしいブーツを世に送り出したわけだ。
このブーツの企画者と作り手に感謝したい。
スポンサーサイト