「中底のステッチの進化版」とは変なタイトルだが、
前回の記事「ヤバいヤツのその後」に関連している。
コレ

中底のこのステッチは、グッドイヤーウェルト製法には必須の「リブ」を中底の裏に縫い付けたステッチである。
多くのグッドイヤー製法の靴では、リブは接着である。
強力に接着されているはずだが、ごく稀にこのリブが剥がれてしまう靴がある。
リブはアッパーとライニングと中底を接合する大切なジョイントである。
これが剥がれるとどういうことが起こるか、靴の構造をよく知る人ならわかるはず。
恐ろしい(笑)。
そんな恐ろしいことができるだけ起こらないように、ステッチ留めしているのだ。
素晴らしい工夫だ。
ただ、手間はかかるだろう。接着した後に縫うのだろうから。
それともリブが既に装着された中底に縫いをかけるのかな?
いずれにしても手間が1つ増えるわけだ。
感心しているのも束の間、すぐに新しい情報が届いた。
この工夫にさらに進化版があるというのだ。
それは私の身近なところにあった。

永代製作所「EVERLASTING」ブラッチャープレーントゥ

この靴の中底を見ると


どこにもステッチは無いではないか‼️
・・・・ではない。

中底をよく見ると、スジ状の切れ込みがぐるりと1周している。

この切れ込みこそ、リブ留めステッチを隠すためのもの。
「隠しミシン」である。
中底にメスを入れて浅く細いドブを作り、ミシンステッチはドブの中におさまって見えなくなるというわけだ。
ステッチが足裏に直接触れて擦り切れない様にしている。
さらに一手間かかっているが、素晴らしい工夫だ。
まさに進化版‼️
永代製作所の企業努力に頭が下がる。
しかもこのことをほとんど宣伝していない。
靴雑誌とかすぐに飛びつくと思うんだけど。
マスコミの取材があったらぜひ言うべきだと思う。
こういうちゃんとした手間をちゃんとかけて真面目に靴を作るメイカーこそ、ちゃんと評価されるべきだと思う。
男の靴の製法やデザインの多くは、かなり昔に確立されたようだが、時代とともに新しい工夫が生まれ、少しずつではあるが、確実に進化しているのだろう。
靴の世界って奥が深い。
