HUNGRY HEART~いつも何かを求めて~

地方在住の50過ぎの中年です。 靴や革製品などの他に、趣味や家族、社会などあらゆることについての自分の思いをだらだらと書き綴っていきたいと思っています。 何かコメントがありましたら遠慮なさらずにどうそ。

コードバンについて


コードバンについていろいろと疑問がある。
厳密にいうと「シェル・コードバン」。
こんな風に書いてあるのを見たことがある。

「農耕馬の臀部のみから得られる革。1頭の馬からとれる大きさは限られており、皮革の王様と言われている。」

自分は革の専門家ではない。
素人なので、思い違いや思い込みがあるとは思うが、素人なりに疑問に思ったことを書いてみた。

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(1)コードバンはなくなる

10年以上前に「コードバンはなくなるかもしれない」と言われていた。
理由は、コードバンの原料となる「農耕馬」の頭数が農業の機械化で年々減っていること、タンナーが世界に1社しかないことなどが挙げられていた。
しかし、あれから10年以上経過したがコードバンはなくならない。
世界中で人気が高まり、供給が追い付かないかもしれないがなくならない。価格は上がる一方だが。

そもそも農耕馬なんて農業ではほとんど使っていない。
農業に機械が導入されてすでに何十年も経っているのだ。
「農耕馬」はすでに食用なのである。
コードバンの原皮の多くがフランス産と言われているのは、フランスでは馬肉食が一般的だからである。
日本でも馬刺しなどが食されるが、日本原皮のコードバンはあるのだろうか。

最近は農耕馬が少なくなり、「代用馬」からもコードバン原皮をとっているそうだが、「代用馬」とは何か?よくわからない。
そういえば、最近の雑誌等を見ると「コードバンは馬の臀部からとれる」という表現になっている。農耕馬と書いていないのだ。
要するに、数が減ってくれば、ちゃんと代用品を用意するのである。
原料が減ってきて、ハイもう生産はやめます、では経済は成り立たないのだから。
人間はなんとかするのだ。

タンナーについてはよくわからないが、有名なのはアメリカのホーウィン社と日本の新喜皮革「だけ」と言われる。
だが、ランドセルなどによく使われてきたコーティングされたコードバンなどは別の日本の企業のものだったような気がする(倒産したのか?)。
イタリア製のコードバンも聞いたことがある。

コードバンは、なくなる、なくなる、と言われているが、恐らくなくならない。


(2)コードバンは強い

「コードバンの強度は牛革の2~3倍」と言われる。
本当にそうか?そもそも強度とはどんな強度かわからない。
漠然とした表現しかされていない。

「農耕馬なのでお尻をたたかれているからこの部分の革は強い」などという説明を見たことがある。
これは嘘でしょう。食用の農耕馬の尻たたくか?
サラブレッドは走るために尻をたたかれるが、サラブレッドにはコードバンはできないそうである。
たたくことと強度は必ずしも一致しないのではないか。

 一般的な革は、銀面と床面の二層から成り立っていて、我々が目にする革の表面は銀面である。
革の構造 一般革
手入れが悪いと経年によって銀面層と床面層がはがれてしまい、表面が浮いてくる。

一方、コードバンは銀面を削り、床面だけの一層。しかも肉側が表面になる。

革の構造 コードバン

一層なのではがれることはない。そういう面では強いのかもしれない。

しかし、繊維の方向が銀面は横方向なのに対して、銀面のないコードバンは縦方向に並んでいる。
したがって、引っ張り強度は弱く、経年でパックリ割れることがある。

雨に対しても弱い。ちょっと濡れただけで水膨れになる。

ちょっとしたことですぐに傷がついてしまう。傷も味だが、簡単に傷がつきすぎる。

「強度」という言葉が独り歩きしていて、具体的に語られていない。
いや、わざと語ろうとしていないのかもしれない。
おかげで、コードバンは屈強な革というイメージでとらえられがちだが、経験から言うと、コードバンは非常にデリケートな革だと思う。
間違っても雨の日には履いてはいけないのだ。
手荒く扱ってはいけない革なのだ。
でもそれがわかるまでには数々の失敗を重ねた。


他にもこんな表現を見たことがある。
「馬が鞭でお尻をたたかれる関係上、コードバンには傷が多く、傷のないコードバンはますます希少である」
これもおかしい。
コードバンは先述のように銀面を使っておらず、しかも我々が目にする表面はもっと深い肉側の面である。
鞭では傷つかない面であり、傷がつくとすれば刺し傷や切り傷だと思う。
角のある牛革よりも傷がつく確率は低いのではないか?
と素人は思ってしまうのだが。


マスコミが流す情報にはやはり嘘がある。
百歩譲って嘘ではないにしても、十分な情報なしでいい加減な表現をするときが多いのではないか。

コードバンについては、希少性と強度をことさらに強調して我々の心を揺さぶり、煽っているのではないか?
もちろん、世界的に供給が追い付いていないのは十分にわかる。
しかし、販売促進を図るとともに、急激な(しかも何度も)価格上昇を安易に納得させようとしているのではないか、と勘ぐりたくなる。

個人的にはコードバンは大好きだ。
一時期、そのデリケートさに心が離れたことがあったが、再び魅了されている。

コードバンの魅力は、希少性でも強度でもなく、「質感」である。
あの何とも言えない艶やかな輝きはコードバンにしか出せない。
靴になった時の足にまとわりつくような感覚もコードバン独特のものだ。

フローシャイムコードバン2 P1040910 (640x479)


コードバンは素晴らしい革である。
ただし弱点もある。完璧な革なんてない。
メーカーやマスコミがその弱点を正しく伝えないから、我々消費者が間違った知識を持ち、被害をこうむるのだ。
コードバン自体には全く罪はないのである。

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 靴について

4 Comments

なおけんた  

Re: No title

Miさん、はじめまして。
shoesadictさんのブログにコメントされている方ですよね。

コードバンの靴について、「今は昔ほど質の良いコードバンが少なくなった」というような雑誌の記述を見ますが、これも眉唾物なんですねえ。初めて理解しました。ということは、これからの新しい靴でも良いコードバンに出会う可能性があるということですね。
やはり我々は自らの経験を信じ、経験豊かな人の言葉を頼りにするべきなんでしょうね。根拠のない情報に振り回されないようにしなければなりませんね。

コードバンに関しては、持ち主が余計な気を使わなければならないほどデリケートな革だと思っています。強靭な革ではなく、守ってやらなければならない革だという正しい認識があれば、気を使うことに疲れないと思うんです。過去の私はそれで手放してしまいましたから。

今までに私が手にしたコードバンで最も素晴らしい質感を持ったものは、このページに出ている内羽根のフローシャイム・インペリアルです。(おそらく)ヴィンテージシューズに非常に詳しい方がオークションに出品していたものを落札しました。この靴については、今度ブログに書き込もうと思っていますが、今手元にないことが悔やまれてなりません。それくらい素晴らしい艶でした。

コードバンの素晴らしさは、その質感にありですね。

これからもよろしくお願いします。

2014/05/11 (Sun) 22:35 | REPLY |   

Mi  

No title

なおけんたさん、初めまして。私も地方在住の靴好きです。

なおけんたさんの靴に関する深い考察には感銘を受けております。
ハンドソーンとグッドイヤーの縫いについての記事もそうでしたし、
このコードバンについての考察もまさにその通りなんだろうと納得しております。

個人的な経験の範囲ですが、コードバンに関しては時代が古いからいいとか悪いとかではなく、
個体差がかなり大きい気がしております。おそらく原皮の善し悪しでしょうか。
バーガンディー色が好きで、古いのから新しいのまで漁った時期があるんですが、
素人目ながら素晴らしい出来映えだなと思うのは10足に1足くらいだった気がします。

そしてこの出来映えというのは、つまり見た目なんですよね。
コードバン神話みたいなのが世間にあるのかどうかわかりませんが、
革として一級品という喧伝には私も疑問を感じておりました。
見た目の話、質感と言い換えていいのかわかりませんが、
それなら頷けるというのにも同意です。

2014/05/11 (Sun) 21:14 | EDIT | REPLY |   

なおけんた  

No title

じーふーさん

私もそうですが、コードバン中毒の人々の心をもてあそぶように価格が高騰しています。今の価格が本当に適正なのか?と考えてしまいます。 オールデンがウエストンより高くなってしまったんですから❗️

2014/04/07 (Mon) 23:36 | EDIT | REPLY |   

じーふー  

No title

面白い記事でした!
確かにおっしゃる通りでコードバンなくなりませんね。
国内への供給量は減っていそうですが。
都内では、コードバンを履かれている方をほとんど見かけませんが海外だと多いのでしょうかね…。

雨どころか手を洗う際の洗面所の水ですら気を使いますが、
私にとってもあの「質感」はたまらないものがあります。


2014/04/07 (Mon) 22:53 | REPLY |   

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