古着屋を営む友人が、オークションでデッドストックの靴を手に入れた。


「HANOVER」の上級ライン「L.B. SHEPPARD」 のウイングチップ。
アメリカの古靴の中では、フローシャイム・インペリアルやネトルトン、ボストニアン・クラウンウインザーなどと並び称される。
しかし、HANOVERのブランド自体が1970年代に消滅しているので、個体数が圧倒的に少ない。
どんなに新しい個体でも、少なくとも40年ほどは経過しているわけで、それがデッドストックとして残っているというのも驚き。
友人は以前から「気になる、気に入っている」という話をしていた。
私も気になっていたが、この個体はマイサイズではない。
しかし気になるからまめにチェックしていたら、いつの間にかなくなっているではないか。
ん?まさか落札したのか?
確かめるために店に行くと、
「買いましたよ」「やっぱり」とお互いほぼ同時にコメント。
足元を見れば、しっかり履いているではないか。


40年(少なくとも)も前の靴とは思えないくらい状態がよい。
外羽根のロングウイングチップで6アイレットは珍しい。
アッパーの革質の良さ、作りの確かさ、質実剛健な佇まいなど、存在感がすばらしい。
レザーソールは目が詰まっていて見るからに丈夫で、簡単には擦り減りそうにない。
質が非常に高く、今の靴ではお目にかかれないものだ。
同じウイングチップでも、フローシャイム・インペリアルやネトルトンとも全然雰囲気が違う。
「どこが違うの?」と言う者もいるが(私のすぐ近くにいる)、断固として違うのだ。



最近の多忙と多忘で、靴にじっくりと付き合うことができなかったが、いいものを見させてもらった。
この友人、サイズが不安で、革質の違う同じサイズの L.B. SHEPPARD の中古を手に入れてサイズ確認をしている。
なかなか用意周到である。
中古を別に購入しても大丈夫なくらい、このデッドストックは格安だった。
正直、相場よりも信じられないくらい安い。
まさに掘り出し物。
この靴とこの靴を買った彼のせいで、こちらの購買意欲も沸々と高まってきたが、今はじっと我慢である。
しかし彼が言うには、自分がこの靴を買ったのは、私のせいなのだそうだ。
もともとニューバランス好き、レザーブーツ好きの彼。
休みのたびに店にやってきては、靴の話ばかりする(しかも買い物はあまりしない)中年男の影響を受けたのだそうだ。
ALDENを立て続けに買ったのも私のせい?
一方、最近、私が古着にはまってきているのは彼のせいである。
お互い様というところか。
ただ、DEEPな古靴の世界、革靴の世界に仲間ができたのは嬉しいところではある。

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