「お父さん,今日は〇〇〇〇で先生から褒められた。」
「今日のテストはうまくできた。」
「サッカーの練習でシュートをたくさん決めた。」
「野球(遊び)でホームランを打った。」
などと,私に「今日の良かったこと」を報告してくるようになった。
めずらしい。
だが、きっかけはあった。
以前から,どちらかというと自分に自信がなく,愚痴をこぼすことが多い子である。
こちらも多すぎる愚痴を聞くのは嫌だから,
「おまえ,よくそれだけたくさん愚痴が言えるなあ。もっと良いことや楽しいことの方を覚えておいた方がいいぞ。」
と言うと,
「良いことがあんまりない」と返すことが多い。
だが,学校では係の仕事や手伝いはよくやるらしく,先生は褒めてくれる。
だが,家では言われたことをすぐにせず,嘘をつくことも多く,私や嫁さんからよく叱られる。
外面(そとづら)がいいのである。
兄,姉からもいろいろ言われる。末っ子の悲劇である。
ストレスは随分と溜まるのだろう。
だからなのか,親に一番甘えてくるのはこの子。
同居の祖父母に一番優しいのもこの子。
年末,子供たちを集めて,家のルールの再確認をした。
ゲームやパソコンなど,メディアについてのルール。
今までにもルールはあったのだが,なし崩しにしてされてきたところがあり,新年を迎える前に明文化した。

末っ子には,さらに
「お前が一番けじめがないから,もう一つルールをプラスする。先に勉強を終わらせてからゲームをすること。わかったか。」
「わかった。ちゃんとやるよ。」となった。
そして元日。
次の日には,嫁さんの実家に家族で行くことになっている。
向こうでは,いとこ達と遊ぶから勉強はできない。
だから,ある程度の宿題は終わらせておかねばならない。
元日といえども,ルールは守らねばならない。
夜の9:00ごろ,末っ子がゲームをしているのを見かけた。
「おまえ,勉強は終わったのか?」
こちらを見ずにゲームをしながら
「うん」
10:30ごろ,就寝しようとしたところ,
「おまえ,あとどれくらい宿題残ってるんだ?明日からしばらくできないからな。見せてみろ」
宿題の問題集を見たら愕然とした。
やっていないページが多すぎる。
「なんでこんなにたくさん残ってるんだ?今まで何してた?」
そして,この日は全く宿題をやっていないことがわかった。
ものすごく叱った。
決めたばかりのルールをもう破ったこと。
自分の行為をごまかすために嘘をついたこと。
この2点について,激しく叱って泣かした。
自分がなぜ叱られているか復唱させた。
当然,ゲーム機は無期限預り。
そして,
「今から宿題をやれ。10ページやれ。それが終わるまでは眠ったらいかん。」
息子は泣きながら勉強。
言った手前,私も眠ることはできず,付き合った。
眠い・・・やり過ぎたか?ちょびっと後悔。
終わったのは夜中の2時半ごろ。
「10ページ終わったか?」
「お父さん,13ページやったよ。」表情はとても明るい。
「どら,見せてみろ。」
「よく頑張ったな。頑張ったからゲームの預りは明日1日だけにしてやる。すぐに寝て明日(今日だが)に備えよう。」
「大丈夫だよ,車の中で眠ればいいんだから」
私は運転するんですけど・・・・・・
苦しいのは実は俺か?
「1年の計は元旦にあり」といわれるが,元日から激しく叱り叱られ,私と息子にとっては最悪の年始となった。
だが,これをきっかけとして,息子は「良いこと」を報告するようになった。
私に認めてもらいたいのか,自ら良いことに目を向けようとしているのか,いずれにしても可愛らしい。
ルールも今のところしっかりと守っている。
これもまた息子の成長である。
(また元に戻るかもしれないけれど・・・)
こういう姿を見ると,元日のできごとは無駄ではなかったのかもしれない,と思う。
少なくとも最悪ではなく、いいスタートを切ったのかもしれない。
「1年の計は元旦にあり」である。